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オルタナティブ資産の運用とは

運用目的

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オルタナティブ資産は、伝統的な投資対象である上場株式、債券とは異なるリスク・リターン特性を有しており、株式市場等の価格変動の影響を受けにくいことから、ポートフォリオに組み入れることにより運用の効率性の向上及び年金財政の安定に寄与する効果が期待できます。また、一般的にオルタナティブ資産は、伝統的資産に比べて流動性が低い一方、その分利回りが高いとされています。GPIFは長期の投資家であり、豊富な流動性資産を有していることから、流動性の低いオルタナティブ資産をポートフォリオに組み入れることで、超過収益を獲得することを目指しています。

海外の年金基金では、このような特性・効果をもつオルタナティブ資産の運用を行うことによる分散投資を推進しています。2020 年度から始まったGPIFの第4期中期計画では、資産全体の5%を上限にオルタナティブ資産(インフラストラクチャー、プライベート・エクイティ、不動産)の運用を行うこととされています。オルタナティブ資産の運用は個別性が強く、また、流動性の低さからも投資評価時及び投資実行後のリスク管理は重要な課題であり、引き続きリスク管理を含めた運用体制の強化に努めていきます。

これまでの投資実績

投資開始来のオルタナティブ資産の時価推移 投資開始来のオルタナティブ資産の時価推移の図

GPIFでは2017年度から、GPIF向け仕様のマルチ・マネジャー戦略(※)を活用したオルタナティブ資産運用の充実を図っています。運用は投資一任契約方式により行っており、選定された運用受託機関は事前に策定された投資ガイドラインに記載されている運用目標、運用スタイル、一定の投資制限等に従いファンドへの投資を実行します。運用開始後は、定期的な運用状況の報告を受け、投資の進捗やリスクのモニタリングを行っています。加えて年次にて、運用受託機関に関する総合評価を行い、運用体制に変化がないことや、投資計画の進捗確認を行い、適切に管理しています。

同戦略に基づき、公募によって選定された運用受託機関による投資も進捗し、2020年3 月末時点のオルタナティブ資産全体の時価総額は9,445 億円(年金積立金全体に占める割合は0.61%)となりました。

※マルチ・マネジャー戦略とは、複数の投資ファンドかつそれを運用する個別ファンドマネジャーを採用する運用手法であり、これを実施するマネジャーにより組成されるファンド・オブ・ファンズに投資します。なお、GPIF では、このようなマルチ・マネジャー戦略を実施する運用受託機関に投資判断を全て一任しています。

〈(例)インフラストラクチャーの運用スキームのイメージ〉 (例)インフラストラクチャーの運用スキームのイメージ図

概要

インフラストラクチャー(インフラ)投資とは、電力発送電、パイプライン、鉄道などのインフラへの投資をいい、長期にわたり安定した利用料収入が期待できることから、海外の年金基金ではインフラを対象とするファンド等への投資が有力な投資手法となっています。

インフラ投資の中でも、特に社会・経済活動に不可欠で、当局による規制環境等が確立されており、長期契約に基づく安定した利用料収入等が期待されるものを「コア型」といい、主な投資対象としています。投資したインフラ資産は、一般的に10 年以上の長期にわたり保有されます。当該投資資金は、安定した利用料収入を源泉とする配当や、最終的には、他の投資家への売却などにより回収されます。

GPIFの投資

〈インフラ投資事例1〉 風力発電施設 ―ポルトガル―
欧州を投資対象とするインフラファンドから、ポルトガルにおける大手風力発電事業会社へ投資しています。同社は、27箇所の発電施設で構成され、合計1,082MWの発電力を有するポルトガルで2番目に大きな風力発電施設のポートフォリオを運営しています。発電した電気を、固定価格買取制度を利用して売電し、長期的に安定した収入を得ています。

風力発電施設 ―ポルトガル―の写真

With the permission of Finerge

〈インフラ投資事例2〉 鉄道事業会社 ―オーストラリア―
オーストラリアを投資対象とするインフラファンドから、鉄道事業会社に投資しています。同社はシドニーの公営鉄道会社が運行する車両の設計・製造・保守管理業務を受託していますが、既に設計・製造は完了しており、現在は保守管理を実施しています。公営鉄道会社との長期契約に基づく安定的な収入が期待されます。

鉄道事業会社 ―オーストラリア―の写真

〈インフラ投資事例3〉 太陽光発電施設 ―日本―
ゴルフ場の跡地を活用して建設された稼動済の大規模太陽光発電施設(メガソーラー)を保有するファンドへ投資しています。発電された電気は固定価格買取制度を利用して売電されることから、長期にわたり安定的な収入を得ることが期待されます。本発電所に隣接する施設からは122,000 枚以上のソーラーパネルが一望でき、地域住民や訪問者が発電施設を見学できるようになっています

太陽光発電施設 ―日本―の写真

運用方針

長期契約に基づく安定した利用料収入等が期待される「コア型」のインフラ資産を中心とした分散投資を、市場環境を踏まえ、タイムリーかつ効率的に行うことを通じて、インカムゲインを中心とした安定的なリターンの獲得を目指しています。

投資対象とスキーム

主に稼働中のインフラ資産のエクイティ(投資持分)及びその収入を裏付とするデット(債権)への投資を行います。

(ⅰ)自家運用での投資信託の購入
2014 年2 月から、インフラ投資に豊富な実績を持つカナダ・オンタリオ州公務員年金基金(OMERS)及び日本政策投資銀行(DBJ)との共同投資協定に基づき、先進国の稼働中のインフラ資産等を投資対象とする投資信託受益証券を保有しています。

(ⅱ)投資一任(ファンド・オブ・ファンズ形式)
  GPIFが選定した運用受託機関による投資が進み、「コア型」のインフラ資産を中心とした分散投資ポートフォリオが構築されています。

運用状況

インフラ投資の2020 年3 月末時点の時価総額は5,451 億円となりました。
国別では、イギリスの割合が最も多く、ポートフォリオ全体の33%を占めており、その他アメリカ17%、オーストラリア13%などとなっています。インフラ・タイプ別では、再生可能エネルギー22%、空港15%、港湾13%などとなっており、安定した収入が期待できる「コア型」のインフラ資産を中心に分散投資されています。運用を開始した2014 年2 月以来の海外インフラ投資全体の内部収益率(IRR)は米ドル建てで3.68%、国内インフラ投資全体の内部収益率(IRR)は円建てで1.57%となっています。また、2019年度に外国籍投資信託及びファンド・オブ・ファンズより受領した配当金(元本返済分を除く。)は合計65億円です。

国別構成比とインフラ・タイプ別構成比のグラフ

概要

主に非上場企業の株式(プライベート・エクイティ(PE))を投資対象とするファンド(PEファンド)への投資です。PEファンドは一般に、投資時期を分散しながら様々なステージにある投資対象企業を発掘し、投資を実行します。PEファンドの投資手法には、バイアウト(投資実行後に投資先企業の経営改善やガバナンスの向上等を通じて企業価値を高めようとするもの)、グロースエクイティ(事業拡大期の企業に成長資金を供給するもの)、ベンチャーキャピタル(成長が見込まれる新興企業等を投資対象とするもの)、ターンアラウンド(経営不振企業の債務のリストラクチャリング等を行うもの)、プライベート・デット(非上場企業が発行する債券や非上場企業に対するローン等への投資)などがあり、これらにグローバルに分散して投資します。

GPIFの投資

運用方針

創業、成長、発展、再生といった、通常の上場株式への投資ではカバーしきれない様々な企業ライフステージにある非上場企業の株式等へグローバルに分散投資を行うことにより、投資ポートフォリオ全体の分散効果を高めリスクの低減に貢献します。また、PEファンドによる経営支援等により企業価値が増大することで、中長期的に上場株式運用を上回る投資リターン確保を目指します。

投資対象と運用スタイル

非上場企業の株式(プライベート・エクイティ)及び非上場企業が発行する債券や非上場企業に対するローン(プライベート・デット)等への投資を行います。

(ⅰ)新興国プライベート・エクイティへの投資
 2015 年6 月から、世界銀行グループの一員である国際金融公社(IFC)及び日本政策投資銀行(DBJ)との共同投資協定に基づき、新興国の消費関連企業等のプライベート・エクイティに投資しています。
 新興国上場株式市場への投資は時価総額が大きく先進国景気に連動しやすいテクノロジーやITセクターが多くを占めますが、新興国の非上場株式、特に今後の人口動態や経済発展によって高い成長が見込め、より内需に連動した消費関連企業等への投資を行うことにより、GPIFの新興国株式投資ポートフォリオの業種の偏りを改め、バランスよく世界経済の成長の果実を獲得することを目的としています。

(ⅱ)先進国を中心としたグローバル・戦略分散型の投資
 プライベート・エクイティ投資の投資環境が整備されている先進国を中心に、グローバルに様々な企業ライフステージやセクターに、複数の戦略手法を組み合わせて分散投資を行います(実際の投資は公募によって選定された運用受託機関を通じて行われます)。
 米国では上場株式市場全体の時価総額よりも非上場株式全体の時価総額の方が大きくなっているとも言われており、先進国を中心とした経済成長や産業の拡大、企業価値増大を幅広く捕捉し、投資ポートフォリオ全体のリスク・リターン効率の向上を目指します

運用状況

プライベート・エクイティ投資の2020年3月末時点の時価総額は185億円となりました(同時点での時価総額は、先行して運用を開始した新興国プライベート・エクイティへの投資によるものです)。国・地域別では、中国を始めとしたアジアを中心に、幅広い新興国に分散投資をしています。業種別では、一般消費財や生活必需品といった消費セクターやヘルスケアなど幅広い業種に分散投資されています。運用を開始した2015年6月以来の新興国プライベート・エクイティ投資の内部収益率(IRR)は米ドル建てで4.03%となっています。
今後はグローバル・戦略分散型の投資を通じて、先進国を中心にグローバルに投資を進めていく予定です。

国・地域別構成比と業種別構成比のグラフ

概要

GPIF が行う不動産投資では物流施設、オフィス、賃貸住宅、商業施設等の実物不動産に投資を行っている不動産ファンドを対象としています。

その中でも入居テナントからの継続的・安定的な賃料収入が期待される投資戦略(「コア型」)を採用しており、これは海外の年金基金でも有力な投資手法となっています。一方で不動産マーケットにはサイクル(需給関係・金融情勢等による価格の変動)があること、また案件あたりの投資金額が比較的大きくなる傾向もあることから、投資のタイミング・対象種別等を分散させること(分散投資)が重要となります。また、管理運営を適切に行える専門会社(アセットマネジャー、プロパティマネジャー等)も十分に活用し、その長期的資産価値を維持する体制も必要です。GPIF では、以上のような不動産投資の特性を踏まえながら、慎重かつ計画的に投資を進めています。

GPIFの投資

〈不動産投資事例1〉 オフィス ―欧州―
ロンドン、パリ、その他欧州主要都市に所在する複数のオフィスからなる分散されたポートフォリオを保有するファンドへ投資しています。本件は、米国及び欧州を代表する機関投資家との共同投資という形態をとっており、投資先資産の長期保有を企図したファンドです。保有物件では、エネルギー消費量や二酸化炭素排出量の削減等の取組を通じて、サステナビリティにも配慮した運営がなされています。

オフィス ―欧州―の写真

※ロンドンのオフィス群(手前中央の物件が本ファンドの投資対象の一つ)

〈不動産投資事例2〉 オフィス ―日本―
東京都渋谷区の中心に立地する新しく竣工した大型複合施設(文化・商業含む。)のオフィス部分を保有するファンドに投資しています。大手 IT 企業及び関連グループ企業が入居し、長期賃貸借契約を締結しています。

オフィス ―日本―の写真

※渋谷区中心部(中央の物件上層オフィス部分が本ファンドの投資対象)

〈不動産投資事例3〉 物流施設 ―欧州―
欧州に所在する物流施設を保有するファンドへ投資しています。主要大都市圏や流通の要衝となる市場を重点的な投資対象としており、このファンドを通じて保有する施設において、従業員の健康や快適性に配慮した施設に認証されるWELL Certified™ Goldを取得しております。

物流施設 ―欧州―の写真

〈不動産投資事例4〉 物流施設 ―日本―
神奈川県川崎市に立地する大型物流施設を保有するファンド(大手運輸会社と長期賃貸借契約を締結中)へ投資しています。eコマースの発展に伴い需要が拡大している物流施設の中でも、大消費地である都心に近接する立地の大型物流施設は希少性があります。

物流施設 ―日本―の写真

運用方針

「コア型」の不動産ファンドを中心とした分散投資を、市場環境を踏まえ、タイムリーかつ効率的に行うことを通じて、インカムゲインを中心とした安定的なリターンの獲得を目指しています。

投資対象とスキーム

主に稼働中の不動産を裏付とするエクイティ(投資持分)及びデット(債権)への投資を行います。

(ⅰ)投資一任(ファンド・オブ・ファンズ形式)
 2017年度に選定した国内の運用受託機関に加えて、2018年度及び2020年度に新規採用した海外における不動産投資の運用受託機関において投資が進捗し、「コア型」中心のグローバルな分散投資ポートフォリオが構築されています。

運用状況

不動産投資の2020年3月末時点の時価総額は3,808 億円となりました。
 国別投資残高の割合では2017年度から先行して投資を開始した日本国内が最も多く、ポートフォリオ全体の49%を占めています。また、2018年度に新規採用した海外の運用受託機関により投資、運用が開始されたアメリカ32%、オーストラリア7%、フランス4%などが続きます。不動産タイプ別構成比は、物流施設の割合が最も多く、ポートフォリオ全体の31%を占めており、オフィス26%、賃貸住宅22%、商業施設16%となっています。いずれも先進国のコア型不動産ファンドを中心に分散投資されています。

運用を開始した2017年12月以来の国内不動産投資の内部収益率(IRR)は円建てで5.97%、同じく2018年9月以来の海外不動産投資の内部収益率(IRR)が米ドル建てで4.88%となっています。また、2019年度にファンド・オブ・ファンズより受領した配当金(元本返済分を除く。)は合計35億円です。今後も、外部コンサルタントも活用し、マーケット環境に留意しつつ不動産投資を進めていきます。

また、2019年度に、GPIFはGRESBに不動産分野の投資家メンバーとして加盟しました。GRESBは欧州の年金基金を中心に設立されたイニシアティブで、不動産及びインフラ投資におけるESG評価基準を提供しています。市場全体のESG情報の開示促進と建設的な対話促進のため、運用受託機関とGRESB評価制度の積極的な活用について協議していきます。

国別構成比と不動産タイプ別構成比のグラフ