「第11回 機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果」
の公表について
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、運用受託機関のスチュワードシップ活動に関する評価と、「目的を持った建設的な対話」(エンゲージメント)の実態および変化の把握を目的として、上場企業向けアンケートを毎年実施しており、本年の結果を以下の通り公表いたしました。
アンケート回答状況
■ 対 象: TOPIX構成企業(2025年12月19日時点) 1,666社(前回1,696社)
■ 回答社数: 625社(前回632社)
■ 回 答 率 : 37.5%(前回37.3%)
■ 回答期間: 2026年1月20日~3月23日
内田理事長コメント
本アンケートは11回目を数え、今回も大変多くの企業の皆様からご回答を賜りました。ご回答いただきました企業の皆様におかれましては、ご多用の中、多くの貴重なコメントやご意見を頂戴し、厚くお礼申し上げます。
今回のアンケートでは、「機関投資家のサステナビリティへの関心度合いおよび活用状況」、「サステナビリティ課題およびKPIの設定状況」、「ESG指数への組み入れに向けた取組み」などの質問項目を追加いたしました。
東京証券取引所(以下、「東証」)の「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請への対応として、過去1年間で取組みを実行した企業が前回より19.3%ポイント増加していました。具体的な取組みについても、昨年度のアンケートでは、株主還元やバランスシートの効率化に関する内容が多かったのに対し、今年度の結果では「成長投資」や「既存事業収益性向上」など、企業の持続的成長に向けた取組みに関する回答も多く挙げられました。GPIF はアセットオーナーとして運用機関に対し、企業価値創造を実現する好循環の経営モデルが実践されるべく、経営資源配分の最適化や資本効率の改善など、実質的なエンゲージメントを行っていただくよう要請しています。また、サステナビリティ課題については長期的な企業価値の向上をふまえた KPI を設け、経営戦略と統合している企業が多く見られました。さらに、関係部署との連携のもと、開示情報の拡充や開示体制の整備が進められていることが窺えました。
GPIFのアンケートは自由記述式の質問が多く、企業の皆様にはご負担をおかけしておりますが、それぞれの質問に対し詳細なご回答をいただいており、その一部も公表資料に含めております。これらの内容には、集計された数値だけでは確認できない企業の具体的な取組みや悩み、機関投資家への期待や対話の好事例など、貴重な情報が多く含まれています。
運用受託機関の皆様には是非これらの情報をこれからの対話の一助としてご活用いただきたいと思いますし、企業の皆様にとっても今後の取組みのご参考になりましたら幸いです。
また、今回も多くの企業から、当法人の運用受託機関による対話の実態を把握するためにGPIFが実施するヒアリング等にご協力いただけるとご回答いただきました。
GPIFでは、本アンケートの回答内容やヒアリング内容なども参考にしながら、今後もインベストメントチェーン全体の好循環の構築につながるスチュワードシップ活動やサステナビリティの取組みを推進してまいります。
本アンケートのトピックス
1.東証の「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請の影響
東証の「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請は、2026年のアップデートにおいて、「経営資源の適切な配分」を通じた中長期的な企業価値向上にも重点を置く方向を示しました。本アンケートでは、前回に続き、東証が要請する一連の対応(「①現状分析」、「②計画策定・開示」、「③取組みの実行」のサイクル)について企業の実態を調査しました。8割以上が「①現状分析」を実施済みと回答した一方で、特に「③取組みの実行」については、前回比19.3%ポイント増と大幅に増加しており、企業の取組みが進展している様子が見られました。
「③取組みの実行」の具体的な内容も併せて質問したところ、「株主還元」に次いで、「成長投資」「既存事業収益性向上」など、企業の将来キャッシュフローに直結する回答が挙げられました。さらに、取組みに際し企業が直面している課題についても確認したところ、成長投資と株主還元の両立に向けた資本配分のあり方や、社内での意識醸成について取り上げた企業が多く、一時的な資本効率の改善に向けた取組みにとどまらず、より長期的で高度化した課題に向き合っていることが示唆されました。
GPIFは、「資本コストや株価を意識した経営」について、投資先企業の中長期的な企業価値向上、ひいてはGPIFの長期的な投資リターンの拡大にとって重要と認識し、第5期中期目標期間における重点事項の1つとして位置づけています。運用機関には、情報開示等を通じた市場評価のディスカウント解消などに加え、事業戦略や資本配分といった、将来キャッシュフローにより直接つながる論点について、実質的なエンゲージメントが行われるよう要請していきます。


2.サステナビリティ情報の活用とKPIの設定について
当法人では、2025年3月に策定したサステナビリティ投資方針やスチュワードシップ責任を果たすための方針等に則り、マテリアリティを重視したサステナビリティに関する各種活動を推進しています。その一環として、今回のアンケートでは企業から見た機関投資家のサステナビリティ情報開示そのものの活用状況と、活用されている開示媒体について質問し、実態を確認しました。その結果、企業の半数近くが「①活用されていると感じる」と回答していた一方で、小型では相対的に「②活用されていないように感じる」との回答が多く見られており、時価総額によって、活用度合いには違いが見られることが分かります。また、活用媒体としては「統合報告書」が最も多く取り上げられ、非財務情報と企業価値向上ストーリーとの結びつきを理解する目的で活用されていることが窺えました。


今回のアンケートでは、上述のサステナビリティ情報開示の動向に加え、企業側のサステナビリティ課題についての具体的な取組みを把握する観点から、KPIの設定および活用状況についても質問しました。サステナビリティ課題について、企業の9割超がKPIを「設定している」と回答したものの、実際のKPIの数には企業間でばらつきが見られました。また、KPIの活用方法について、機関投資家との対話のほか、社内会議体での定期的なモニタリングや部門毎の進捗管理、経営陣の意思決定、役員報酬や各従業員の人事評価への反映などが挙げられました。


3.GPIFのサステナビリティ投資方針を踏まえた取組みについて
GPIFでは、2025年3月末にサステナビリティ投資方針を策定し、「サステナビリティに関するリスクの低減や市場の持続可能性の向上」と「市場平均収益率の確保」の両立により、ポートフォリオ全体の長期的なパフォーマンス向上を目指すことを明記しました。本方針のもと、市場環境を勘案しながら、既存のESG指数については各指数への配分額の見直しをはじめ、継続的に投資額の最適化を図っているほか、昨年7月にはESG指数・ESGファンドを新たに募集しています。
なお、今回のアンケートでは、既存のESG指数の評価に加えて、企業によるESG指数への組み入れに向けた取組みについて質問しました。8割近い企業が、GPIFのESG指数に組み入れられる(あるいは、組み入れ比率を高める、以下同様)ために実施している取組みが「①ある」と回答しており、中型、大型の企業がより積極的に取り組んでいる傾向が見られました。また、組み入れに向けた具体的な取組みとして、ギャップ分析のほか、KPIの設定および定期的なモニタリングなどが挙げられ、上述のKPIの活用例と類似していることが確認できました。
さらに、指数への組み入れ対応を進めている企業が、どの指数への組み入れを選好しているか、下記グラフに整理しています。なお、当法人が選定した指数以外では、指数会社の他、ESG評価機関も回答として挙がりました。


以上


