「運用受託機関インタビュー(結果概要) ~ 『資本コストや株価を意識した経営』エンゲージメントの実効性を高める取組みについて~」
の公表について
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、国内株式運用受託機関のうち13機関を対象に、「資本コストや株価を意識した経営」をテーマとしたエンゲージメントに関するインタビューを実施しました。その結果を取りまとめましたので、公表します。
理事長コメント
近年、東京証券取引所による「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請を契機として、多くの企業において、資本効率の改善や成長投資、事業ポートフォリオの見直し、株主還元のあり方などについての検討がこれまで以上に進められています。こうした取組みは、短期的な株価対策ではなく、将来のキャッシュフロー創出力を高め、中長期的な企業価値向上につなげていくための重要な経営課題であると考えています。
GPIFは、当テーマについて、第5期中期目標期間における重点事項の一つと位置付けています。その一環として、今回、国内株式運用受託機関のうち13機関を対象にインタビューを実施し、「資本コストや株価を意識した経営」をテーマとするエンゲージメントの実態について調査しました。ご協力いただいた運用機関の皆様には厚く御礼申しあげます。
その結果、多くの企業において投資家との対話に対する姿勢が前向きになっていることに加え、株主還元の強化や政策保有株式の縮減、資本配分方針の開示など、具体的な変化につながった事例が確認されました。また、運用機関の要請も、単なる資本効率改善の要請にとどまらず、成長投資を含む資本配分の優先順位や経営資源の活用方法など、中長期的な企業価値向上や持続的成長に向けた経営の質そのものに踏み込むものへと発展していることが分かりました。
さらに、運用機関が企業との対話に際して綿密な事前分析を行い、企業の状況や成熟度に応じて論点を設定しながら、企業の自律的な変革を促している姿も見られました。こうした取組みは、スチュワードシップ活動が単なる意見交換ではなく、企業価値向上に向けた建設的な対話として機能していることを示すものと考えています。
一方で、企業価値向上への道筋は企業ごとに異なり、その成果が短期間で表れるとは限りません。だからこそ、運用機関には、将来キャッシュフローの向上につながる本質的な課題について、投資家ならではの視点を活かしながら、粘り強く対話を継続していくことを期待しています。また、企業の皆様には、運用機関から企業への期待を踏まえた上で、中長期的な企業価値向上・持続的成長の観点から、引き続き実効性の高い経営戦略の推進を期待しております。
GPIFとしても、今回のインタビューを通じて得られた知見を運用機関評価の高度化に活用するとともに、アセットオーナーとして、その知見を広く発信してまいります。
本資料は、インタビューを通じて得られたベストプラクティス等を一般化して整理するとともに、GPIFから運用機関の皆様への期待や運用機関から企業の皆様への期待を示したものです。本資料が、運用機関、企業、そして資本市場関係者の皆様にとって有益な参考となり、建設的な対話のさらなる深化につながれば幸いです。
<GPIFの第5期中期目標期間における重点事項>
―「長期的な企業価値向上」「資本市場や経済全体の持続的成長」を重視した取組みを推進―

出所:「GPIF のスチュワードシップ活動の方向性と当面の取組み」よりGPIF作成
1. 実施要領
| 対象 | : | GPIFの国内株式運用機関のうち13機関 |
|---|---|---|
| 実施期間 | : | 2025年10月~12月 |
| 実施方法 | : | GPIF職員の往訪によるインタビュー |
| 調査事項 | : | 「資本コストや株価を意識した経営」に関するエンゲージメントの実施状況 |
2. 本資料の内容・構成・想定読者
- 内容:インタビューで聴取した事項を基に、運用機関がエンゲージメントの実効性を高めるための工夫や、運用機関による企業への期待、GPIFにおける今後の活用方法についてまとめたもの(文責:GPIF)
- 構成:Ⅰ.インタビューから見られた傾向、Ⅱ.エンゲージメントの実効性を高めるうえでの運用機関の工夫、Ⅲ.今後に向けて
- 主な想定読者:運用機関、上場企業に加えて、証券会社や東証・金融庁等の資本市場関係者
3. 結果の概要
Ⅰ.インタビューから見られた傾向
- 当テーマの対話を積極化している運用機関も見られたほか、東証の要請以降、多くの企業が投資家との対話に前向きになっていることで、対話が成立しやすくなっている。
- 成功事例として取り上げられた企業で比較的多く観測された変化は、株主還元強化、政策保有株式縮減、資本配分に関する方針の開示である。
- 実際の対話はその一段先に進んでおり、資本配分の優先順位など、経営の質そのものにまで及んでいる。
Ⅱ.エンゲージメントの実効性を高めるための運用機関の工夫
- 事前準備に相当なリソースをかけており、必要に応じて企業が社内で使えるよう資料を準備しているケースもある。
- 対話を進める際は、企業の段階を見極めながら論点を深め、企業に自律的に経営を進化してもらうよう努めている。
- 対話による変化が出やすい企業/出にくい企業に特徴がみられるが、変化が出にくい企業に対しても粘り強く対話を行っている。
- エンゲージメントツールとしての議決権行使の活用や、スチュワードシップ部門と運用部門の連携や投資判断への反映も確認された。
Ⅲ.今後に向けて
- 運用機関においては、引き続き将来キャッシュフローにつながる論点について、投資家ならではの視点を活かし、企業価値向上に向けた経営の質をさらに高める役割を期待する。
- 多くの運用機関が企業に期待することは、企業が資本コストや市場評価も踏まえながら、自社の経営課題を主体的に捉え、中長期的な企業価値向上と持続的な成長に向けて、実効性の高い経営戦略を推進していくことである。
- GPIFは、インタビューの内容から得られた知見を運用機関評価へ反映するよう努めるとともに、アセットオーナーとして、得られた知見を広く発信することでインベストメントチェーンの好循環の促進につなげていく。
以上


