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2023/24年 スチュワードシップ活動報告

2024年3月26日

GPIFは、「2023/24年 スチュワードシップ活動報告」を以下の通り公表いたしました。

GPIFは、長期的な投資収益の拡大を図る観点から、投資先及び市場全体の長期志向と持続的成長を促す様々な活動を進め、スチュワードシップ責任を果たしていきます。

本活動報告では、スチュワードシップ責任を果たすための方針に記載の通り、第1章で「GPIFの取組」について、第2章で「運用受託機関の取組と課題」についてご報告します。第3章では、前2章を踏まえ、「運用受託機関への期待と課題・GPIFの今後の対応」をまとめています。

「スチュワードシップ活動報告」概要

<GPIFの取組>

GPIFの取組における、この一年間の新たな取組のうち、主なものは以下の通りです。

  • グローバル・アセットオーナーフォーラムの開催
  • スチュワードシップ活動及びESG投資の効果測定
  • SNS~X(旧Twitter)及びYouTube~での情報発信

<GPIFの運用受託機関のスチュワードシップ活動の状況>

(1)国内株式運用受託機関による日本株のエンゲージメント状況

 2023年1月~12月の一年間で、国内株式運用受託機関は、2023年3月末時点で保有している国内企業数2,312社の40%にあたる924社と対話を行っています。時価総額ベースでは94%に相当します。また、対話件数は6,545件であり、その84%にあたる5,474件がパッシブ機関(*)による対話です。
 規模別では、TOPIX500構成企業では、93%にあたる466社の企業とエンゲージメントを行っていいます。テーマ別では、業種に拘わらず、全般的にガバナンスに関するテーマでの対話が多くなっており、ガバナンスには、政策保有、資本効率、財務戦略など幅広いテーマが含まれています。一方で、E(環境)やS(社会)のテーマについては業種によって対話のボリュームに違いもあり、各業種のマテリアリティをベースに対話のテーマが設定されていることが窺えます。医薬品の場合、他の業種に比べて、S(社会)の比率が高く、エネルギー資源、電力・ガスでは、E(環境)に関するテーマでの対話が多く設定されています。
(*)パッシブとアクティブ両方受託している場合はGPIFの委託の多いマンデートでカウント。


(2)エンゲージメント強化型パッシブ4社のエンゲージメント進捗状況

 GPIFの株式運用のうち約9割がパッシブ運用であり、上場企業に幅広く投資を行っていることから、市場全体の長期的な成長がリターン向上に欠かせません。パッシブ運用については投資先企業の長期的な企業価値の向上や特に市場全体の持続的成長を促すためのエンゲージメント活動に取り組むことが重要と考えています。GPIFでは、スチュワードシップ活動を通じた市場全体の持続的成長とスチュワードシップ活動のアプローチ方法の多様化・強化を目的として、スチュワードシップを重視したパッシブ運用である「エンゲージメント強化型パッシブ」ファンドとして、2018年にアセットマネジメントOne、フィデリティ投信の2社を採用し、2021年に、三井住友トラスト・アセットマネジメント及びりそなアセットマネジメントの2社を追加採用しました。4社とも、エンゲージメントは順調に進んでおり、そのステージも計画策定、施策実行や情報開示の改善など企業の具体的なアクションの段階に進んできています。


(3)重大なESG課題

 GPIFは、スチュワードシップ活動原則で、重大なESG課題について積極的なエンゲージメントを求めています。内外株式パッシブ運用機関においては、全運用受託機関が、「気候変動」、「ダイバーシティ」、「情報開示」を重大な課題として4年連続で挙げています。一方、アクティブ運用機関は、国内株式と外国株式で認識している重大なESG課題が分かれています。国内株式では、「気候変動」、「取締役会構成・評価」、「少数株主保護(政策保有等)」、「資本効率」、「情報開示」を全機関が2年連続で挙げています。

<運用受託機関への期待と課題>

 運用受託機関には引き続き、GPIFのスチュワードシップ活動原則、議決権行使原則を踏まえた対応及び従来から課題として挙げてきた事項に加え、以下3点への対応を特に期待しています。

  • 運用とスチュワードシップ・ESGの融合
  • 資本コストや株価を意識した経営の実現に向けたエンゲージメント
  • 投資先に対するメッセージと情報開示(投資先に対するメッセージと一致したスチュワードシップ活動)

<GPIFの今後の対応>

 GPIFは以下の取組を今後進めていきます。

  • 双方向のコミュニケーションを重視した運用受託機関や指数会社との「エンゲージメントの強化」
  • スチュワードシップを重視したパッシブ運用モデルの定着と深化
  • エンゲージメントの実態把握を目的とした発行体との対話
  • 外部機関と協働したESGを含むエンゲージメントの成果や効果測定

 スチュワードシップ活動・ESG投資の効果測定については、2023年度に開始した「エンゲージメントの効果検証」と「企業価値・投資収益向上に資するESG要素の研究」は分析終了後、結果を公表予定です。
 双方向のコミュニケーションを重視した運用受託機関や指数会社との「エンゲージメントの強化」では、特に、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けたエンゲージメントの実施状況の確認をしていく予定です。2023年3月に東京証券取引所が「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」を公表し、企業に対して、経営層が主体となって、現状分析、改善に向けた計画策定、開示、取組の実行を要請しました。上記の重大なESG課題でも触れているように、資本効率は国内株式運用受託機関の考える重大なESG課題として毎年上位に挙がっており、以前からエンゲージメントにおける重要なテーマの一つでしたが、これまで以上に注目が高まっています。運用受託機関への期待と課題でも「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けたエンゲージメント」を特に期待する事項として挙げています。
 また、スチュワードシップ活動の実質化や資産運用ならびに投資家全体の高度化が求められているなか、アセットオーナーも投資先企業の企業価値向上に向けて、より投資先企業に対する理解が必要になると考えています。そのため、制度上認められた範囲内で、エンゲージメントの実態把握を目的とした発行体との対話を実施していく予定です。

以上

For All Generations