「ESG 要素と企業価値に関する効果検証」報告書を公表しました
GPIFは、「スチュワードシップ活動・ESG投資の効果測定プロジェクト」の一環として、「企業価値・投資収益向上に資するESG要素の研究」を実施しました。プロジェクトの完了に伴い、以下の通り、報告書を公表します。
GPIFは、投資先および市場全体の持続的成長が、運用資産の長期に亘って安定した収益を獲得するために不可欠であると考え、サステナビリティ投資を行っています。本効果測定では、GPIFが採用しているESG指数のキーパフォーマンス指標(KPI)が、企業の財務情報や企業価値指標にどのような影響を与えるのかを定量的に検証しました。具体的には、企業価値指標を被説明変数とし、制御変数を含む企業・時間固定効果モデルを用いた重回帰分析を実施しています。
主な分析結果としては、多様性に関するKPI(女性取締役比率や新規採用者に占める女性比率)は、トービンのQやPBRといった企業価値指標に統計的に有意な正の影響を与えていることが示されました。また、コーポレート・ガバナンスに関するKPI(業績連動型報酬制度や独立社外取締役比率)は、ROEに対して、統計的に有意な正の影響を及ぼしている結果が示されました。一方で、一部の多様性に関するKPIについてはPBRやROEに対してESGの観点と整合しない結果も示されました。
さらに、本報告書では、ESG指数のKPIが企業価値指標に与える影響の時間的な変化について、分析しました。その結果、指名委員会の設置がROEに及ぼす影響には、2014~2017年の初期分析期間から2019~2022年の直近期間にかけて、統計的に有意な正の変化がみられましたが、買収防衛策については、負の変化がみられました。
本研究は、ESG指数に関連するKPIには企業価値指標に統計的に有意な正の影響を与えるもの、ESGの観点と不整合な結果の双方が確認されました。GPIFでは引き続き、サステナビリティ投資に関する多面的な検証を続けていき、投資開始時に期待した投資の効果が、将来的にも期待通りに発現しない可能性が高いと判断される場合には、果断に見直しを行っていきます。
なお、当該報告書の定量分析については、EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社に委託し、実施しました。