4. 基本ポートフォリオの考え方

要約

  • 長期的な運用においては、短期的な市場の動向により資産構成割合を変更するよりも、基本となる資産構成割合を決めて、これを維持する方が効率的で良い結果をもたらすことが知られています。
  • このため、公的年金積立金運用では、各資産の期待収益率やリスクなどを考慮した慎重な検討を行った上で、基本となる資産構成割合(基本ポートフォリオ)を定めています。

(1)長期投資としての基本ポートフォリオの策定・管理

長期的な運用においては、短期的な市場の動向により資産構成割合を変更するよりも、基本となる資産構成割合を決めて長期間維持していく方が、効率的で良い結果をもたらすことが知られています。

既述のとおり、厚生労働大臣が定める中期目標において、運用目標の一つとして、「長期的な観点からの資産構成割合(ポートフォリオ)を定め、これに基づき管理を行うこと」が要請されていますが、これは、上記の考え方が具体的に示されたものと言えます。

(2)現行の基本ポートフォリオ

公的年金積立金運用においては、上記の考え方や中期目標に基づき、次表のとおり、基本となる資産構成割合である「基本ポートフォリオ」(同様の意味で「政策アセットミクス」という言葉が用いられることもあります)を定めています。

国内債券 国内株式 外国債券 外国株式
35% 25% 15% 25%

(3)基本ポートフォリオ策定の経緯

第1期中期目標期間における基本ポートフォリオの策定

平成18年度から21年度までを対象期間とする第1期中期目標では、「年金財政は、実質的な運用利回り(賃金上昇率を上回る運用利回り)が確保される限り基本的には影響を受けないことから、年金財政上の諸前提における実質的な運用利回りを確保するよう、長期的に維持すべき資産構成割合(基本ポートフォリオ)を定め、これに基づき管理を行うこと」とされました。

公的年金制度の年金額については、年金を受け取り始めるときの年金額は、各人の現役時代の賃金をもとに名目賃金上昇率に応じて裁定(再評価)され、受給後は物価上昇率に応じて改定される仕組みとなっているため、長期的には、年金給付費は、名目賃金上昇率に連動して増加することになります。したがって、運用利回りのうち名目賃金上昇率を上回る分(実質的な運用利回り)が年金財政に影響を与えることになり、実質的な運用利回りの実績が財政再計算の前提を上回れば年金財政は見通しより好転し、逆に下回れば悪化するということになります。このため、基本ポートフォリオに基づく年金積立金の管理及び運用を適切に実施することにより、年金財政上の要請である「実質的な運用利回りを長期的に確保」することが可能になるという考え方です。

16年改正に際し、物価上昇率、賃金上昇率、年金積立金の運用利回りの前提については、長期的な観点から、次のとおり設定されました。

平成16年財政再計算における経済前提
物価上昇率 長期
(平成21年度以降)
1.0%
賃金上昇率 2.1%(実質1.1%)
運用利回り 3.2%(実質的な運用利回り 1.1%)

図:平成16年財政再計算の前提

第1期中期計画において、以上のような前提に基づき、分散投資の考え方を踏まえ、年金財政との整合性や長期的な積立金の下方リスクを最小化することに留意にした上で、リスク水準を国内債券による市場運用のリスクと同程度に抑えつつ実質的な運用利回り1.1%(名目運用利回り3.2%)が確保されるよう次表の基本ポートフォリオを策定しました。

第1期中期計画における基本ポートフォリオ
  国内債券 国内株式 外国債券 外国株式 短期資産
基本ポートフォリオ 資産構成割合 67% 11% 8% 9% 5%
乖離許容幅 ±8% ±6% ±5% ±5% -

第2期中期目標期間における基本ポートフォリオの策定

①平成22年4月~平成25年6月

平成22年度から26年度までを対象期間とする第2期中期目標では、「今後年金制度の抜本的な見直しを予定しているとともに、当法人の運営の在り方について検討を進めていることから、この運用目標は、暫定的なものであることに留意し、安全・効率的かつ確実を旨とした資産構成割合を定め、これに基づき管理を行うこと。その際、市場に急激な影響を与えないこと。」とされました。

この中期目標を踏まえ、第1期中期計画における基本ポートフォリオについて、引き続き安全・効率的かつ確実であることを検証・確認した上で、運用委員会の議を経て、当該基本ポートフォリオを第2期中期計画における基本ポートフォリオとして策定しました。

②平成25年6月~平成26年10月

平成24年10月、会計検査院の報告書の所見において、「暫定ポートフォリオが安全、効率的かつ確実かなどについて、中期目標期間中に定期的に検証することを検討する」こと等と指摘され、また、これを受け、厚生労働省より、「基本ポートフォリオについて定期的に検証を行い、必要に応じ見直すよう」要請があったことから、運用委員会で審議を行い、検証を行った結果、基本ポートフォリオの変更が必要との結論を得ました。変更後の基本ポートフォリオは以下のとおりです(変更日:平成25年6月7日)。

【参考資料】年金積立金管理運用独立行政法人の中期計画(基本ポートフォリオ)の変更[PDF:698KB]

  国内債券 国内株式 外国債券 外国株式 短期資産
基本ポートフォリオ 資産構成割合 60% 12% 11% 12% 5%
乖離許容幅 ±8% ±6% ±5% ±5% -

③平成26年10月~

平成26年10月31日、第2期中期目標が変更され、「年金積立金の運用は、厚生年金保険法第2条の4第1項及び国民年金法第4条の3第1項に規定する財政の現況及び見通しを踏まえ、保険給付に必要な流動性を確保しつつ、長期的に積立金の実質的な運用利回り(積立金の運用利回りから名目賃金上昇率を差し引いたものをいう。)1.7%を最低限のリスクで確保することを目標とし、この運用利回りを確保するよう、積立金の管理及び運用における長期的な観点からの資産構成割合(基本ポートフォリオ)を定め、これに基づき管理を行うこと。」とされました。

名目賃金上昇率から下振れリスクが全額国内債券運用の場合を超えないこと、株式等は想定よりも下振れ確率が大きい場合があることも十分に考慮し、予定された積立金額を下回る可能性の大きさを適切に評価するとともに、リスクシナリオ等による検証について、より踏み込んだ複数のシナリオで実施した上で、実質的な運用利回り1.7%が確保されるよう次表の基本ポートフォリオに変更しました(変更日:平成26年10月31日)。また、基本ポートフォリオについては、マクロ経済や市場等の動向を注視しつつ、今回設定した長期的な前提に変化がないか、年金財政も踏まえて定期的に検証を行い、必要に応じて見直しを検討します。

  国内債券 国内株式 外国債券 外国株式
基本ポートフォリオ 資産構成割合 35% 25% 15% 25%
乖離許容幅 ±10% ±9% ±4% ±8%

(注)運用体制の整備に伴い管理・運用されるオルタナティブ資産(インフラストラクチャー、プライベートエクイティ、不動産その他運用委員会の議を経て決定するもの)は、リスク・リターン特性に応じて国内債券、国内株式、外国債券及び外国株式に区分し、資産全体の5%を上限とします。また、経済環境や市場環境の変化が激しい昨今の傾向を踏まえ、基本ポートフォリオの乖離許容幅の中で市場環境の適切な見通しを踏まえ、機動的な運用ができるものとしています。ただし、その際の見通しは、決して投機的なものであってはならず、確度が高いものとします。


資金運用は経済環境などに左右されますので、今後とも、短期的な収益状況の変動は避けられませんが、当法人は、貴重な年金積立金をお預かりする受託者としての責任を果たすべく、長期的な観点に立った分散投資を基本とし、適切なリスク管理を行いながら、年金積立金の安全かつ効率的な運用に全力を尽くすこととしています。

なお、当法人の「投資原則・行動規範等」、「GPIFについて知る」、「最新の運用状況ハイライト」なども当Webサイトに掲載していますので、あわせてご参照下さい。また、本欄の内容について、ご意見やご質問があれば、ご遠慮なくお寄せ下さい。

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